Life of Play & Music

芝居と音楽で生きている ~ YOKO MATSUOの舞台・ライブ情報

喜劇だらけについて

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昨年の12月に、東京・両国シアターカイで、うずめ劇場が上演した

「喜劇だらけ」を振リ返ってみようかと。

シアターカイの入口

公演詳細は、うずめ劇場公式サイトで!

「喜劇だらけ」という変なタイトルは、

演出のペーター・ゲスナーの案。

日本人からは、なかなか出てこない日本語ですよね。

いつもながら、そこがおもしろいんですけど。

19世紀にウィーンで、歌手、俳優、劇作家、演出、果ては劇場支配人までやった

才気あふれる “ネストロイ” という人の作品を、2本立てでやった公演タイトルです。

1本目は、「昔の関係」

2本目は、「酋長夜風」

という作品。

もっとも、後者は夜風ではなく、専門家筋では、夕風と訳されることが多いんだとか。

原題の「アーヴェントヴィント」のほうが、その筋では通じるようです。

うずめ劇場は、夜風で通しちゃいました。

150年前くらいに書かれた芝居なので、台本を読むと古臭い感じがしますし、

実際、稽古に入る前、関係各位からそう言われました。

舞台設営風景

「酋長夜風」は、スペクタクル感もあり、

オッフェンバックのオペラの楽曲満載で、

ヨーロッパでも、今でもよく上演されるらしく、おもしろそうだな、

というのはあったのですが、

「昔の関係」は、あまり歓迎されなかったように思います。

 

でも、上演してみると、これが意外に受けがよく、驚きました。

若い人の反応も良かったようです。

むか~しの、よくあるパターンの喜劇、のはずなんだけど。

やってみて、わかったんですが、「昔の関係」って、男女4人が登場し、

登場人物それぞれの独白で、お客さんは4人の事情が、はじめのうちに全部わかってしまう。

4人のことをよ~く知ってる気分になるわけです。

で、お客さんは余裕をもって、役者がじたばたするのを楽しめるわけです。

だから、役者が出てきただけで、笑いが起こったりする。

「あ、いま、あなたがさんざん言ってたのは、この人のことね~」みたいな感じ。

子どもの頃、テレビでよく見た藤山寛美の松竹新喜劇なんかも

そうだったと思いますが、最近そういえば、そういうのってあまりないかな?

だから、そういう喜劇を見慣れない世代にとっては、新鮮だったのかもしれません。

ただ、ネストロイの作品は人情喜劇ではなく、

人間の悪魔的な部分を喜劇的に増幅して見せたあげくに

最後には浄化される、みたいな、しかも、誰にでもそんなところはあるよ、と突きつけてくるような

鋭さがあります。それもちょっと小気味よくて、展開はめちゃくちゃでも、嘘くさくない感じがします。

役者としても、客席と一体感が出てくると、ものすごく面白い。

筋は他愛ないんだけど、それぞれの設定がちゃんと立ち上がってくると、

ほとんどの人が4人のどこかに共感できるんじゃないかな。

そこは、ネストロイのうまさなんでしょうね。

特にこの2作品は、ネストロイ晩年の作で、円熟味を増した頃の作品というだけはあります。

人間同士、社会の軋轢、世界の問題が、全部つまってる気がする。

150年以上経った今でも、恐ろしいくらいあてはまります。

ネストロイ自身、奥さんに恋人ができて駆け落ちされた、という経験があり

かなり失意の底に沈んだようですが、結局、そういう経験を喜劇として

笑い飛ばしているエネルギーがすごいです。

最近の芸人さんも、プライバシーをネタにして大変だな、と思いますが

昔からそういうもんなんでしょう。

昔の関係 ペッピ

私は、昔の関係では、

桜井久美さんの衣装と、エイミー前田さんのメイクのおかげで、

一世を風靡した女優ペッピに化けさせていただきました。

少々厚化粧。

でも、舞台だと普通に見えるんですよね。さすが。

この帽子も素敵です。千秋楽の日、帽子との別れが辛かった。

写真は楽屋で記念撮影の一枚。

真那胡 敬二さん扮するムッフルの、昔の恋人役をやらせてもらって、

役者冥利につきましたばい!

 

 

2作目「酋長夜風」は

人肉を食らう習慣のある2つの島の酋長同士が行う、

友好のための歴史的会談を縦軸に、

酋長夜風の娘と、島に流れ着いた文明人の若い男との出会いと恋を横軸に

いろいろ絡み合って、大混乱になるというお話しです。

よそものは、食われるのが掟。観光客も対象になります。

食べる対象に恋をするというのは、牛に恋するようなものかな?

この芝居は、大団円、ハッピーエンドの体裁を取っていますが、

裏を返せば、自分たちの一番大事な神様を自分たちの手で殺してしまう、

という取り返しのつかない悲劇的な結末でもあります。

本当に、150年も前にこんな芝居書いたのかよ、と思います。

逆に言えば、当時はまだ、文明の脅威を感じられたのかもしれません。

現代の私たちは、当たり前に享受しすぎて、失ったものすら気づかない。

産業革命以来の進歩は、人類の長い歴史からみると、気が狂ったように速かったのです。

ネストロイも、まさか、ここまで、という事態に、

もしかしたら我々は陥っているのではないかしらん。

 

しかし、芝居は、真那胡 敬二さんと、大月秀幸さん扮する、酋長同士のやりとりは傑作で

私は、大月さんの扮する酋長トサカワシの島民として、楽しくやらせてもらいました。

ホーメイもやれたしね。尾引浩志さんのホーメイ、とくにスグットは素晴らしかったなあ。

楽屋で、いつもホーメイがどこからともなく聞こえてきて、心がなごみました。

「酋長夜風」の出演メンバーの記念写真は、こちらからどうぞ

 

 

 

 

 

 

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